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2006年8月14日 (月)

人間の條件

[1959~1961年・監督/小林正樹■おすすめ度★★★★★ 観ておくべき度★★★★★ 思い入れ度★★★★★]
【第1部純愛篇・第2部激怒篇(1959年) 第3部望郷篇・第4部戦雲篇(1959年) 第5部死の脱出・第6部曠野の彷徨(1961年)※各2部ずつ封切り】

もし、日本の関わった大東亜戦争を体感できるものがあるとしたら、この映画を置いて他に無いだろう。

全上映時間、574分。(現行DVDによる。)およそ10時間にも及ぶこの6部作は、日本映画が最も力のあった時代が生んだ不滅の金字塔である。

物語は簡素だ。
『仲代演ずる主人公・梶(これほどの長尺の主人公なのに下の名が無い!!)が戦争の激化と共に満州・北方戦線に送られる。』
これだけである。いや、確かに細かいことを連ねるといろいろあるが、骨子はただこの一文に尽きる。

この映画が製作された当時、1959年といえば、まだ戦争が終わって15年も経ってはいなかった。製作者たちにも出征経験のある者も多かっただろう。だからこそ、舞台が戦地に変わってからの描写は迫真の一語である。

中でもボクが最もリアルさを感じたのが、戦線での最初の戦闘に遭遇するシーンだった。
よくあるような、勇ましく銃を放つ兵士なんてそこには一人もいない。塹壕に潜み、いつ撃たれるか、いつ爆撃されるか、という、すぐ隣りに死の暗渠が口を広げ待ち構えている極限の恐怖。戦場にいるのはヒーローなぞではなく、常に己れの意思とは無関係に放り込まれた市井の平凡な生身の人間なのだ。お国のためとか、そんな大儀名分なぞそこでは無意味だ。ただ、死にたくはないという実にシンプルな感情のみが全身を貫く。それを観客に突きつける。
戦闘シーンにおいて、これほど真に迫る映像を観させられたことは他に例がない。
このシーンを観るだけでもこの映画の価値は十二分にある。

おまけに、前線のトンでもなく広大なオープンセット。これほどの長尺をまったく飽きることなくグイグイと引っ張っていく説得力と緊張感。日本人として、必ず体験しておくべき映画だと思う。

そう、この映画を観る、ということそのものが『体験』なのだ。日本人なら、長い人生のうちの10時間は「人間の條件」に費やすべきなのだ。

かつてはオールナイトの定番で毎年どこかしらでは企画されていたこの「人間の條件」だったのだが、すべてを上映するにはあまりに長尺ゆえ、近年ではそれもめっきり減ってしまった。何せ休憩を含むと12時間にも及ぶ一大イベントである。自分も20代前半の頃、今は無き銀座松竹で観たが、たしか22時開始、終了が翌朝9時半だったと思う。これがオールナイトの初体験でもあった。

やはり年に一度くらいは一挙上映をしてほしい作品。それは、この作品を世に送り出した映画会社の義務でもある、と思う。
松竹さん、どうかお願い!

人間の條件DVD-BOX
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小林正樹 松山善三 稲垣公一
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DVDで観賞するときも、一気に通しで観てこそ、この映画のほんとうの素晴しさが実感できる。ぜひともそうして欲しい。

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