ゴジラVSビオランテ
[1989年・監督/大森一樹■おすすめ度★★★★ 観ておくべき度★★★ 思い入れ度★★★★]
ここでひとつ素人ながら私説を論じさせてもらうが、たとえば生物の新陳代謝・消化吸収なんてェものはモトを正せば化学的反応のはずだ。ヒトが塩分を摂取するとき、塩化カルシウムCaClと同質のKClを吸収してしまうように、よしんば放射性物質であろうとも同じ塩基系列のようなものであるなら吸収してしまうかもしれない。だがそれはあくまで化学的反応であり、分子内に含まれた放射性同位体そのものから発する放射能は変えられるはずがないのではないだろうか。
放射能を除去するにはその半減期を待つか、イスカンダル星から技師を招いてコスモクリーナーDを起動させなければ不可能だろう。
単なる化学的置換だけでは核の放射能は消去できない。
それでもよしんば百歩譲ってその抗核なんたらが発見されたとしよう。もしそれにより放射能除去が可能なら、ゴジラ殲滅よりも医者として原爆被害に苦しむ人々に応用すべきだ。
…まぁ、それは蛇足だが。
要するに、SFにおける科学考証というものは、こんな素人ごときに突っ込まれる程度の穴があってはいけない、ということだ。そういった映画界の作る側の甘さ・観客不在のナメた態度が日本映画をダメにした、とボクは思っている。
なに? ゴジラはSFじゃないって?
そのような甘い見解がいかんということがわからんかぁぁ!!!
…と、冒頭から苦言ばかりを述べてしまっているが、実はボク的にはこの「VSビオランテ」の評価はそれなりに高い。それは、ゴジラという極めて固定化されたイメージの世界に、何がしかの風穴を開けようと努力しているからだ。
あたかも、劇中の展望レストランの天井に残されているゴジラ襲撃の足跡の如く。
ビオランテというまったく異質な怪獣像。でありながら、怪獣ばかりに目が行くことなく、人間側のドラマもきちんと描かれている。一本の映画として、ちゃんと観賞に耐えうる出来になっている。東宝自衛隊もしっかりと闘いに参加し、日本の国益を守ってくれている。
平成ゴジラに対しては辛口ばかりを述べているが、こと「VSビオランテ」についてだけは別だ。
おそらくは「平成ガメラ」にも本作が影響を与えたであろう、というのはすでに定説だろう。
実を云うと、本作こそが1954年の第一作「ゴジラ」の最も正当な後継作なのではないのか。そうボクは考えている。
先述のこのレストランの足跡や、本編冒頭の地下道の描写、街のいたる場所に残されたゴジラの通った爪跡…これこそが、本来ゴジラという作品が持ちえていたディザスター映画のテイストだ。
そう、ゴジラ映画とは、怪獣ものである以前に、シリアスなディザスター映画でなければならない。昭和・平成・ミレニアムと何十作と作られたゴジラ映画だが、この「ディザスター」感を感じさせるのは初作と「VSビオランテ」くらいしか無いだろう。
本作は一般公募でストーリーを募集したが、あるウワサではこれは次点だった、とボクの耳には伝えられてきたことがある。トップ選考だったストーリーは、
出現したゴジラを自衛隊が北海道方面へ誘導、ゴジラを利用して北方四島を奪還する
という話だったとか…ボツになったのは「あまりにも内容が過激すぎる」ということだった、らしい。
もちろん、あくまでもただのマニア間での噂話・ヨタ話。単に「こんなのありそう」が伝わるうちに膨らんでいっただけなのだろうと思うので、もはや真偽のほどは不明、これはひとつの都市伝説となっているのだが…もしこれが本当で「ゴジラ2」がこのストーリーだったなら、なかなかに斬新で面白い作品となっただろう。
でも多少ブラックすぎるかも。
残念ながら本作は興行的には不成功に終わり、以後平成ゴジラは大きな舵取りをしていく。
それはゴジラそのものの迷走の始まりでもあった。
だが、ボクは改めて断言する。
この「VSビオランテ」こそ、ゴジラ映画の精神を正しく受け継いだ逸品である、と。
ついでながら、
心ひそかにボクはこの作品を「ゴジラVS沢口靖子」と呼んでいるのだが…
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