2006年9月28日 (木)

スパイ・ゲーム

[2001年・監督/トニー・スコット■おすすめ度★ 観ておくべき度★ 思い入れ度★]

これを、
「男同士の熱い友情を描いた感動作」
だと思ってはいけない。

トンでもない人権軽視・人種差別的作品なのだ。

たったひとりの、しかも命令無視して勝手に行動した米国人を助けるために、いったい何人の中国人を殺していいというのか。
しかもその救出作戦さえも違法行為なのに、だ。

本作のテーマは、

「アメリカ人を救うためなら、シナ野郎は皆殺しだぜ!!」

である。(一部差別的表現を含むことをお詫びします)

これをみてもわかるとおり、監督トニー・スコットの描く作品はことごとくどこかモラリティーの欠如したものがほとんどである。
だが、彼のテンポのいいスピーディな演出で観るほうはつい感情が流されていき、なかなかその陰にある本質は判断できないのだが。

これとまったく同じ骨子でじつは同監督の「ドミノ」も作られている。たった一人の女の子を救うためには、違法な強盗や傷害を起こしてもノー・プロブレムだぜ!! なのだ。

これがトニー・スコットの考える正義なのだ。

たとえば批評眼があるマーティン・スコセッシあたりならこんな内容でも「タクシードライバー」になったり、ローランド・エメリッヒならブラック感たっぷりに「インデペンデンス・デイ」になったりするのだが…

思い起こせば出世作「トップガン」も敵対するソ連戦闘機のパイロットの顔は見えない。対面にあるものが同じ血の流れた生身の人間である、ということは常に隠蔽されてしまう。

じつのところ、これこそが一般米国人のマジョリティでもある。トニー・スコットはその、身内の米国人以外は人間扱いをしないという無意識なパクス・アメリカーナの裏に潜む平均的考えを代言しているに過ぎない。おそらく監督本人も自覚が無いであろう。

同じ頃に兄・リドリー・スコットがやっぱり「アメリカ軍人を助けるためなら、黒人野郎は皆殺しだぜ!!」という映画「ブラックホーク・ダウン」を作ったのも、なにやら兄弟の因縁を感じたりもするのだが。

だが、これがハリウッド映画となってその思想をグローバル化していく過程は安直に受容する前に少し診断してみたほうがいい。それには自ら批評する眼が必要だろう。

トニー作品は、つい感動する前に、半歩下がって一考したほうがいいよ。

スパイ・ゲーム
B000066HMN
トニー・スコット ロバート・レッドフォード ブラッド・ピット
Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| | コメント (0) | トラックバック (1)