2006年8月31日 (木)

デビルマン

[2004年・監督/那須博之■おすすめ度なし 観ておくべき度なし 思い入れ度★]

デビルマン まぁ、いろいろとあちこちで語られているとは思うし、その意味では間違いなく文句のない話題作ではあった。

まず何よりも脚本が悪い。そりゃ確かに原作漫画の『デビルマン』といえば屈指の名作、ボクの個人的ランキングでは戦後日本漫画のオールタイムベスト第2位(ちなみに1位は『あしたのジョー』)であり、既にファン各々がそれぞれ固まったイメージを持っているという難しい題材ではあるのだが…そんなことを一切排除しても、クオリティが低すぎるのだ。
逆にこれを観てコミック版の『デビルマン』がこんな程度の作品とはぜったいに誤解しないでほしい!! そんな勘違いをするなら是非原作をまず一読してもらいたい。
この日本には「デビルマンの布教」に命を懸けている人間がごまんといる。まるで秘密結社のようだ。否、秘密結社になってもぜんぜんおかしくないくらいに狂信的信者が多いのだ。かくいうボクだってそうだ。それほどに原作は素晴しい。
漫画『デビルマン』とは、カルトの経典なのだ。

脚本家に力が無いのであれば、いっそのこと原作のテキストどうりに書き上げてしまえばいいと思うのだが、そうではなく原作エピソードの順序を換え、かえって悪くしてしまっている。それは台詞でも同様で、原作中では不動明が言っていた重要な言葉を美樹に言わせてしまい、効果を台無しにするという失態を犯している。
もともとシナリオ担当者がこうしたハードなドラマを書くのには不向きなパーソナリティだったというのもあるだろうが、それだったならキチンとそれ向きの人を探してきて欲しいもんだ。…だって、東映アニメーションも制作に名を連ねているわけでしょ? こーいう話だったらアニメ畑の脚本家で適材がごまんといるだろうに。

大体において、作品のテーマを登場人物にだらだらと喋らせるなんぞ、駄目々々な脚本家の典型的パターン。そんなの、シナリオ学校で教える基本でしょ?? と思う。

と、ここまで書いて分かるように、要は製作者側に原作に対するリスペクトとか愛が無いのだ。ただ売れそうなコンテンツの版権を取り、企画を通して劇場のスケジュールを押さえただけ。ベルトコンベアーに乗せたマニュファクチュアな安かろう悪かろうの粗造製品に過ぎない。ウェルメイドなんか1ミクロンだって考えちゃいない。
そんなモノに対していかにも免罪符的に永井豪をカメオ出演させるんじゃあないっっ! と少々怒りも出ますわなぁ。

噂によれば、制作が1年も延びていたとか…でもそれだったなら、大傑作をズタボロに踏みにじるという悪魔の様な所業をする前に、スタッフ全員で原作を本がボロボロになるまで熟読しろ、と言いたい。

これはそもそも漫画というものを低く見ている映画界の風潮や偏見にも原因があると思う。ボクが漫画畑の人間だから言うわけでもないが、はっきり云ってそのへんの映画作ってる人たちなんかが絶対敵わないくらいに漫画というジャンルには人材が集まっている。
それはコミックマーケットのサークル参加者が概算5万人以上いる、という統計学的データからも明らかである。はたして、映画界にそれほどの裾野の広いアマチュア層がいるであろうか?
いや、映画界だけではない。他のあらゆるジャンルの創作活動において、それと同等のものは無いであろう。日本の漫画界というものは、世界でも類を見ない巨大なカテゴリーなのだ。それを支える層の厚さが違うのだ。
それを客観的に評価する目を、いい加減他のジャンル(小説や映画を作ってる輩)には気付いてほしい、と常日頃思っているのだが。

要は、そんな気持ちが日本の文化を覆っている限り、漫画を映像化する場合常にナメた作品しか粗製濫造されないということになってしまう。どこかでプライドや偏見を捨て、この悪連鎖をキチンと断ち切らないと、日本の映画界もダメになっていくだろう。
日本の漫画『オールドボーイ』が韓国で映像化→カンヌグランプリ受賞→ハリウッドでリメイクという世界の流れを日本の映画人・文化人連中はもっともっとよく研究して欲しい。


…話がそれてしまった。閑話休題。
だいたい、この公開の2004年といえば、いちばんの駄作はブッチギリで『CASSHERN』で決まりだと思っていたのに…いやはや『デビルマン』を観た後ではその『CASSHERN』でさえも「ナンだかんだいってもオモシロいじゃんこれー」(by Utada)とか思えて来てしまう。下には下があったものである。

おそらくやる気も出ないまま任された監督もかわいそう。いっそ辻真先が脚本を手がけていたTVシリーズ版のほうを実写化すればまだ良かったのに。そのほうが『ろくでなしBLUES』なんかでノリノリの根アカ不良番長的アクションを撮っている那須博之監督には合っていたと思う。そのあたりの那須作品はボクもおおいに好きなので、尚更本作は不本意。この一本によって那須監督の評価が一気に下がってしまった。本来なら能天気でアッパーな東映アクションを代表する名職人である。けっしてこの一作で印象を決定してほしくはない。
噂では、監督の意図とはまったく別の編集がなされてしまった、とも聞くが…
ただ、断言するが、作品をつくるのは監督の仕事だが、それがヒットするかどうかはプロデューサーの力量である。それは金策近作ジブリ「ゲド戦記」にも顕著に示されている。

これが那須監督の遺作となってしまったことがつくづく残念でならない。

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